STORY
外科医師のユハは夏の休日を、家族とともに湖畔の別荘で過ごしている。この日も、釣りを楽しみ、妻、娘と優雅でのどかな一日を過ごすはずだった…。うたた寝をしていたある日の午後、妻が湖の底に沈んでいた網に足をとられ、水死してしまう。不慮の事故により突然訪れた失意の日々。以来、ユハは、妻を救えなかったという自責の念から、毎日を無気力で死んだように過ごしていた。そんな父を心配する娘のエリ。十数年後、エリがピアスの穴をあけるために訪れた店に同行したユハは、隣接するSMクラブに迷い込んでしまう。そこには、ボンデージ衣裳に身を包んだドミナトリクスのモナがいた。客と間違えられたユハは、そこで思いもかけない体験をする。首を締め付けられ、苦しい息遣いの中で、目の前に現れた映像は妻の死の直前の湖の中だった。この先に妻がいる。僅かながらも生きる糧を見つけたユハは、その日を境にモナの元に通いはじめる。女王様からの屈辱と拘束、そして生死をさまよう窒息寸前のプレイの中で妻の面影を見る日々。その時間は、ユハにとってかけがえのない時間になっていく。一方で、快楽を求める抑えられない感情は、仕事や私生活へも少しずつ支障をきたしていく。やがて、二人のプレイはエスカレートし、さらに危険を増した行為へと発展。その行為の先に二人が見たものとは。そして、二人の運命を大きく変える出来事が待ち受けていた。
COMMENT
水辺と女性と狂気とエロティシズムはいとも結びつきやすい。
オフィ-リア・コンプレックス。
ユハは妻の妖艶な溺死のイメージの囚人になってしまった。
彼は生前の生身の肉体より遥かに強く亡霊を愛してしまったのかもしれない。
人間は亡霊や幻影しか愛せないのかもしれない。
――ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン・美術家)
これです。
まさにこれです。
純愛です。
至福の瞬間です。
真のパートナーに出会ってしまった男と女の
素敵な素敵な映画です。
――髙嶋政宏(俳優)
サディズム、マゾヒズムの描写は衝撃的だが、人間の本質を描くもので深い感銘を覚える。扇情性を売り物とする凡百のSM映画とは似て非なるものだ
――山口剛(テレビ・プロデューサー)
アートの領域に入り込んでいる映像と見事に時空を超えたストーリー展開に酔えた。
映画に非日常を求める人には絶対にオススメ。映画館の闇の中で陶酔感が増幅されるだろう。
――立川直樹(プロデューサー/ディレクター)
人ってどうして変わりたいともがくのだろう。その夜、一人の男が天使となって地上に舞い降りる瞬間を目撃してしまった。息苦しくも幸福な究極の変態映画です。
――睡蓮みどり(女優・文筆家)
この男は心臓外科医でありながら、自らの傷を治療することを望んではいない。
かさぶたを度々剥がすような快感は、最早美しい思い出のように描かれる水死のトラウマによって、さらに強固なものになる。
気持ち良いことがやめられない、その叫ぶような欲求の奥に、傷つけるもの、傷つきたがる者それぞれの悲しみが光っている。それは他の誰にも理解されないのだから、こうして暗闇で慰め合うほかないのかもしれなかった。
――戸田真琴(セクシー女優・文筆家)
<敬称略・順不同>