INTRODUCTION

失くした果てに溺れる刹那な痛み。呼吸も止まるくらいに美しい愛と再生の物語。

妻を不慮の事故で失い、死んだように毎日を送っている外科医のユハ。救いを求めた先は、ふと迷い込んだSMクラブだった。喉元を締め付けられ、窒息寸前の生死をさまよう中でだけ、妻と再会できるのだ。 本作は、2019年カンヌ国際映画祭監督週間で上映。その斬新なストーリー、卓越した演出力で、多くの観客に衝撃と感動を与えた。監督は、前作『2人だけの世界』(2014年)が、ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭ほか、世界40カ国の映画祭で上映、さらに、ユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)で7部門にノミネートされ、作品賞と監督賞を含む4部門で受賞を果たしたユッカペッカ・ヴァルケアパー。ユッシ賞9部門にノミネートされた本作では、研ぎ澄まされた光や色調の息をのむ映像と、生と死の世界を時間や音で表現する繊細な演出で、美しい愛と再生の物語を見事に描き出す。

主演の外科医ユハには、フィンランドを代表する俳優、ペッカ・ストラング。感受性豊かな繊細な演技で、妻を亡くした主人公の深い悲しみを巧みに表現する一方、限界まで過激に魅せるSMシーンでは、大胆、且つ超濃密な世界を作り上げ、観る者を圧倒する。

SMクラブで働くモナには、数々の映画や舞台で活躍し、確かな演技力を誇るクリスタ・コソネン。昼は整体師をしながら、夜はSMのドミナトリクスという多面的で謎めいた役どころを見事に演じ切っている。

数々の受賞を経て本作は、2020年ユッシ賞にて主演男優賞他、撮影賞、編集賞、音楽賞、音響デザイン賞、メイクアップデザイン賞の6部門を受賞という栄冠にも輝いた。

失意の中を生きてきた男と、痛みを与えることでしか生きられない女。 出会ってしまった二つの悲しみは、誰にも奪えない唯一無二の愛へと発展していくのであった。

STORY

外科医師のユハは夏の休日を、家族とともに湖畔の別荘で過ごしている。この日も、釣りを楽しみ、妻、娘と優雅でのどかな一日を過ごすはずだった…。うたた寝をしていたある日の午後、妻が湖の底に沈んでいた網に足をとられ、水死してしまう。不慮の事故により突然訪れた失意の日々。以来、ユハは、妻を救えなかったという自責の念から、毎日を無気力で死んだように過ごしていた。そんな父を心配する娘のエリ。十数年後、エリがピアスの穴をあけるために訪れた店に同行したユハは、隣接するSMクラブに迷い込んでしまう。そこには、ボンデージ衣裳に身を包んだドミナトリクスのモナがいた。客と間違えられたユハは、そこで思いもかけない体験をする。首を締め付けられ、苦しい息遣いの中で、目の前に現れた映像は妻の死の直前の湖の中だった。この先に妻がいる。僅かながらも生きる糧を見つけたユハは、その日を境にモナの元に通いはじめる。女王様からの屈辱と拘束、そして生死をさまよう窒息寸前のプレイの中で妻の面影を見る日々。その時間は、ユハにとってかけがえのない時間になっていく。一方で、快楽を求める抑えられない感情は、仕事や私生活へも少しずつ支障をきたしていく。やがて、二人のプレイはエスカレートし、さらに危険を増した行為へと発展。その行為の先に二人が見たものとは。そして、二人の運命を大きく変える出来事が待ち受けていた。

CAST/STAFF

ペッカ・ストラング Pekka Strang

ペッカ・ストラング PEKKA STRANG

1977年フィンランド生まれ
映画「Drakarna över Helsingfors」(2001)でダニ役を演じ、ユッシ賞助演男優賞にノミネート。米アカデミー外国語映画賞フィンランド代表作品「Lapsia ja aikuisia - Kuinka niitä tehdään?」(2004)、『ファブリックの女王』(2015)などに出演。2017年、テッポ・アイラクシネン監督の短編映画「Katto」で主役に抜擢され、カンヌ国際映画祭パルムドール短編作品賞候補となる。2017年、フィンランドの巨匠ドメ・カルコスキによるゲイアートの先駆者、トウコ・ラークソネンの波乱の半生を描いた作品『トム・オブ・フィンランド』で主役を演じ、内気な青年期から、名声を得てカリスマ性を発揮していく姿を繊細に演じ、世界中で賞賛を浴びる。演劇界でも活躍し、リラ劇場「Stenar i fickan」(2001、2005)、「Satan i Moskva」「Den komiska tragedin」(2002)ほか様々な舞台に出演。モリエールによる喜劇「守銭奴」(2011)、カミュによる「Just Assassins」(2011)で主演を務め注目を集める。また、2019年にスタートしたCGアニメ「ムーミン谷のなかまたち」(2019)のフィンランド・スウェーデン版でヘムレンさん役の声を演じ、更に活躍の場を広げる中、2020年には本作で見事ユッシ賞主演男優賞を受賞。

ペッカ・ストラング Pekka Strang

クリスタ・コソネン KRISTA KOSONEN

1983年フィンランド生まれ
2009年、ヘルシンキ芸術大学シアターアカデミー卒業。2006年、在学中にアンティ=ジュッシ・アニラ監督によるフィンランドと中国の共同制作映画『ジェイド・ウォリアー』で初主演。2010年、アンドリー・ジョルダク演出による「アンナ・カレーニナ」の舞台で主演を務め、トゥルク劇場優秀賞を受賞。「ワーニャ伯父さん」、「桜の園」、「エンジェルス・イン・アメリカ」など舞台への出演も精力的にこなす。活躍は国内にとどまらず、ブライアン・ライズバーグ監督による「Big Significant Things」(2014)や、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『ブレードランナー 2049』(2017)にも出演。また、フィンランドの優れたテレビ番組に贈られるゴールデン・ベンラ賞最優秀女優賞を、「Moska」(2011)、「Toisen Kanssa」(2014)で二度、受賞。2015年、アンティ・J・ヨキネン監督による『ラストウォー1944 独ソ・フィンランド戦線』に出演し、上海国際映画祭にて金爵賞主演女優賞とユッシ賞主演女優賞を受賞。ザイダ・バリルート監督『マイアミ』(2017)でも、ユッシ賞主演女優賞にも輝いた。出演最新作は『TOVE』(2020)。

ペッカ・ストラング Pekka Strang

オーナ・アイロラ OONA AIROLA

1988年フィンランド生まれ
2015年ヘルシンキ芸術大学卒業。長編デビュー作となったユホ・クオスマネン監督作『オリ・マキの人生で最も幸せな日』(2016)がカンヌ国際映画祭ある視点部門に出品されグランプリを受賞したのを皮切りに、世界各国の映画祭で高い評価を得て、8部門を受賞したユッシ賞でも自身も助演女優賞を受賞するなど、一躍注目を集める。ミュージシャンとしても活動し、『オリ・マキの人生で最も幸せな日』をはじめクオスマネン監督作品に楽曲を提供している。

ペッカ・ストラング Pekka Strang

ヤニ・ヴォラネン JANI VOLANEN

1971年フィンランド生まれ
数多くの映画やテレビ、舞台に出演。「MIEHEN TYÖ」(2007)でユッシ賞助演男優賞を受賞。その9年後、ウラン鉱山災害による環境問題や汚職を描いた社会派ドラマの実話『巨山』(2016)で再び、同賞を受賞し話題となる。その他の主な出演作に「Häiriötekijä」(2015)、「Suomen hauskin mies」(2018)、「Ilosia aikoja, Mielensäpahoittaja」(2018)がある。また、監督・脚本家としても才能を発揮し、「Rumble」(2002)、「M/S Romantic」(2019)でメガホンをとる。

ペッカ・ストラング Pekka Strang

監督・脚本:ユッカペッカ・ヴァルケアパー JUKKA-PEKKA VALKEAPÄÄ

1977年フィンランド生まれ
長編デビュー作「Muukalainen」(2008)が、カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン、ロッテルダム国際映画祭企画マーケットに選出、ベネチア国際映画祭でプレミア上映され注目される。 前作『2人だけの世界』(2014年)は、ベネチア国際映画祭、トロント国際映画祭ほか、世界40カ国の映画祭で上映。さらに、ユッシ賞7部門にノミネートされ、作品賞と監督賞を含む4部門で受賞している。

<フィルモグラフィーと主な出品映画祭>
2014年『2人だけの世界』– 下記を含む40以上の国際映画祭に出品
ベネチア国際映画祭(2014年)
トロント国際映画祭(2014年)
ヘルシンキ国際映画祭(2014年)
リオデジャネイロ国際映画祭(2014年)
レイキャビック国際映画祭(2014年)
ヨーテボリ国際映画祭(2015年)
トーキョーノーザンライツフェスティバル(2017年)

2008年「Muukalainen」
ベネチア国際映画祭(2008年)
ヨーテボリ国際映画祭 ドラゴン賞最優秀北欧映画賞受賞(2009年)

2003年「Keinu」(短編)
ロカルノ国際映画祭(2003年)
ヘルシンキ国際映画祭(2003年)
NYU国際学生映画祭(2003年)
カメリメージ祭(2003年)
ヨーテボリ映画祭(2004年)
カルロヴィ・ヴァリ・フレッシュ・フィルムフェスト(2004年)

2000年「Silmät kiinni ilman käsiä」(短編)
ボローニャ・ヨーロッパ映画学校フェスティバル

COMMENT

水辺と女性と狂気とエロティシズムはいとも結びつきやすい。
オフィ-リア・コンプレックス。
ユハは妻の妖艶な溺死のイメージの囚人になってしまった。
彼は生前の生身の肉体より遥かに強く亡霊を愛してしまったのかもしれない。
人間は亡霊や幻影しか愛せないのかもしれない。

――ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン・美術家)

これです。
まさにこれです。
純愛です。
至福の瞬間です。
真のパートナーに出会ってしまった男と女の
素敵な素敵な映画です。

――髙嶋政宏(俳優)

サディズム、マゾヒズムの描写は衝撃的だが、人間の本質を描くもので深い感銘を覚える。扇情性を売り物とする凡百のSM映画とは似て非なるものだ

――山口剛(テレビ・プロデューサー)

アートの領域に入り込んでいる映像と見事に時空を超えたストーリー展開に酔えた。
映画に非日常を求める人には絶対にオススメ。映画館の闇の中で陶酔感が増幅されるだろう。

――立川直樹(プロデューサー/ディレクター)

人ってどうして変わりたいともがくのだろう。その夜、一人の男が天使となって地上に舞い降りる瞬間を目撃してしまった。息苦しくも幸福な究極の変態映画です。

――睡蓮みどり(女優・文筆家)

この男は心臓外科医でありながら、自らの傷を治療することを望んではいない。
かさぶたを度々剥がすような快感は、最早美しい思い出のように描かれる水死のトラウマによって、さらに強固なものになる。
気持ち良いことがやめられない、その叫ぶような欲求の奥に、傷つけるもの、傷つきたがる者それぞれの悲しみが光っている。それは他の誰にも理解されないのだから、こうして暗闇で慰め合うほかないのかもしれなかった。

――戸田真琴(セクシー女優・文筆家)

<敬称略・順不同>

THEATER

東北
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
山形 イオンシネマ天童 023-665-1166 2/26(金)〜
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 1/22(金)〜
東京・関東
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
東京 ヒューマントラストシネマ渋谷 03-5468-5551 12/11(金)〜
神奈川 シネプレックス平塚 0570-064-804 2/5(金)〜
千葉 シネプレックス幕張 0570-783-231 2/5(金)〜
茨城 シネプレックスつくば 0570-783-122 2/5(金)〜
栃木 宇都宮ヒカリ座 028-633-4445 2/27(土)〜
中部
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
愛知 名演小劇場 052-931-1701 1/9(土)〜
愛知 ユナイテッド・シネマ豊橋18 0570-783-668 1/29(金)〜
新潟 ユナイテッド・シネマ新潟 0570-783-401 2/26(金)〜
石川 ユナイテッド・シネマ金沢 0570-783-071 2/11(木・祝)〜
近畿
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
大阪 シネ・リーブル梅田 06-6440-5930 1/1(金)〜
京都 京都シネマ 075-353-4723 1/22(金)〜
和歌山 イオンシネマ和歌山 073-456-5055 2/26(金)〜
中国・四国
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
広島 サロンシネマ 082-962-7772 2/12(金)〜
九州・沖縄
都道府県 劇場名 電話番号 公開日
福岡 KBCシネマ 092-751-4268 3/29(月)~4/1(木)
熊本 ユナイテッド・シネマ熊本 0570-783-087 2/19(金)〜
大分 シネマ5 097-536-4512 2/20(土)〜
鹿児島 ガーデンズシネマ 099-222-8746 6/14(月)~17(木)
沖縄 ミハマ7プレックス 098-936-7600 1/22(金)〜